「クウネル」のリニューアルとADについて

たとえば、母親の心が娘の体に入ってしまったとか、幼馴染みの男の子と女の子が出会いがしらにぶつかって入れ替わっちゃったとか。「中身がその人で あれば外見は問題ない」っていう絆の試され方が「物語」にはよく登場する。でもその相手が、中身も本人とちょっと違うし、さらに外見も似つかなかったら、 とてもその人を信じることはできないだろう。というよりそれってもうちょっとしたホラーだ。うっかり悲鳴とかあげたりしてもおかしくない。

突然「ターゲット層を30代から50代に変更します、ただし誌名はそのままで。」という方向転換をした「クウネル」のamazonレビューが炎上してる、と聞いて見にいったら炎上どころか葬式みたいな有り様だった。

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とりあえず実物を手に取って誌面を見てみる。一番の炎上原因はもちろん、誌名を残したままターゲット層だけ変えたことだけど、その次はアートディレクターの変更なんじゃないか。

創刊時からADだった有山達也さん(イメージキャラクターの誕生にも関わっている)が手掛けたクウネルの誌面には、ゆったりとした時間の流れが存在する。 フォント選びや文字組、誌面レイアウトによるところも大きいけど、「ADっていうのは写真家と編集者のバランスをとる仕事」「デザイン云々より雑誌を好き になってくれることが大事」と語る同氏の人間性がにじみ出たものだと思っている。2003年の創刊からリニューアル前の最新号まで、ずっとADを担当でき たのも「編集者と読者」の両方に愛されていたからなんだろう。

リニューアル後は、「BRUTUS」などで知られる、藤本やすしさんがADを担当している。「50代向け」に裁ち落し部分いっぱいまでレイアウトされた誌 面のマージンは少なめ。写真も文字もできるだけ大きくなっており、ターゲット層に対しての誌面作りはばっちり。...なので結局「クウネルじゃなかったら いいのに!」に尽きる。

ちなみに有山さんは、一昨年創刊した「つるとはな」という、こちらもやや高齢者層向けの雑誌のADを担当している。私のつたない説明より、「つるとはな」 を手に取ればいろいろ伝わると思うので、見つけたらぜひ見てみてください。こっちのほうがよっぽどクウネルに世界観が近い。

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※途中の有山さんの発言っぽいのは、10年前に私が参加したADについての有山さんのトークでのメモ書きからの抜粋なので、発言そのままではないです。方向性はあってるはず。