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東東京に鬱蒼と茂る

東京の西ばかりに住んでいるので、東東京には思い入れがあまりない。たまに足を運んでも休日の問屋街は人の気配がなくて、土日の飲食店はまるで潰れたあとみたいに薄暗い。ビルには空室が目立ち、耐震性の問題で長く入居をすることが難しいばかりか、密集して建っているため建て替えることすら困難な場合もある。

東東京にいくと「CENTRAL EAST TOKYO」(通称:CET)のことを思い出す。2003年から2010年のファイナルまで数回にわたったサイトスペシフィック型のカルチャーイベントで、空きビルの一室、地下、屋上、路上まで、東東京のそこかしこが舞台だった(2003年の開催は前身となった「東京デザイナーズブロック」)。当時はフルタイムで働いていたのでほとんど関われなかったけど、一度だけ展示会場の番をしたことがある。薄暗い、作品と一緒に知らない街のビルの一室にひとりでじっとしていると、居てはいけないところにいるような、非日常的な気もちになったりした。

近年は町おこし型のイベントもだいぶ増えて、モノによっては行政のお金がふんだんに使われるそれらの「正しさ」とか考えてしまったりすることも多かったりする。ただ、CETに関してはプロデューサーを務めた佐藤直樹さんの存在感というか、がむしゃらに何かやっている感じが根底にあって、集まっているボランティアの癖の強さも(どこにいってもイベントボラの人たちは妙で面白い)、なんだか野生のたくましさみたい雰囲気を感じたのを覚えている。薄暗い街にどこからともなく若者が集い、地下から低音が響いていたそれはさながらジャングルのようだった。

CETが終わってからずいぶん経って、東東京エリアはやっぱり疎遠だけど、アーツ千代田3331がある秋葉原にはちょこちょこ行く。先日みた佐藤直樹さんの個展「秘境の東京、そこで生えている」には、ここ数年のあいだ佐藤さんが取り組んでいる植物を描いた木炭画が3331のメインギャラリー内に並んでいた。照明を少し落とした会場はいつものホワイトキューブより闇が濃く、鬱蒼とした会場にはカンバスになっている木の香りと、ほんの少しの墨の匂いが漂っている。

佐藤さんは数年前にデザインの手をとめて、この絵画制作に軸を移すと発表し、これまでに幾度か木版画を発表している。作品の長さは100メートルを超え、会期中に150メートルを目指すという。CETの舞台になった地域で、佐藤さんが植物で壁を埋めていくさまは、場所と記憶が地続きになっているように感じる。

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余談1: 2005年頃に「佐藤直樹2chの自分板に降臨してバトってる笑」とデザイン仲間に教えてもらって見てみたら本当に本人で笑ったんだけど、あれって佐藤さんを象徴するできごとな気が今もしてる。 ここの349あたりから。 http://academy3.2ch.net/test/read.cgi/art/1018143158/

余談2: タナカカツキさんの「オッス!トン子ちゃん」に出てくる岡本太郎作品の模写は佐藤さんが描いているので手元にあったら見てみてください。